L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

料理を考える時。

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常日頃から料理の事を考えている。意識をするというよりは、呼吸をするように当たり前に生活の一部になっていて、頭のどこかに存在している感覚だ。ふとした時に、日々考えていた点と点が線になり円になり形を作っていく。走っている時や早く目が覚めた布団の中で思い立つことが多い。

 

『料理をどのように考えますか?』

 

多くの人に聞かれる質問だが、僕は一つメインの食材を決めそこから派生する相性の良いものを考え(味わいや香り、テロワール)構成していく。なのでいきなりゴールが見えるわけでもなく、少しづつ輪を広げ高さと深さを作りながら立体的にバランスをとる。自分の中の方程式は、温度、濃度、旨味、風味、塩味、酸味、食感を上手く組み合わせること。当たり前に感じるかもしれないが、口の中でどうゆう順番で感じてもらい、どの様な美味しさを伝えるかを明確に考え、それを想い通りに構成するのはとても難しい。料理とは作って終わりではなく、食べ手がいて完成するものだからなおさらだ。どのように食べるかな?という想像が出来るかどうかはとても大きな差になってくる。

 

三角形のショートケーキを人がどう食べるのか。ほぼすべての人が先端から食べる。人の行動を予測して料理を作ると必然的に盛り付けは決まってくるのだ。ゲストが料理を口に運ぶまでが、美味しさをデザインする事だと僕は考えている。

 

『美味しい』へのアプローチは人それぞれ違うが、『どの様な状態を美味しく感じやすいか』はある程度体系的なものがあるので、それを知っているかいないかはとても重要になってくると思う。新しいこんな料理を作りたいというモチベーションも大切だが、どうゆう料理を作れば美味しく感じてもらえるかを考える事はもっと重要だ。

 

食べ手がいて完成するからこそ、この気持ちは忘れてはいけない。

 

今日も誰かの笑顔の為に料理を作ろう。

 

 

 

 

 

 

息抜きには。

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たまには緩い話も。

 

僕の息抜きは、長風呂(サウナも)とマンガだ。

 

常日頃から何かしら考えている僕は(考えないという事が極端に苦手)頭を空にするのが苦手で、オンとオフの切り替えが下手です。常に仕事をしているのは単に切り替えができていないからともいえます(苦笑)

 

そんな自分をリセットするのに欠かせないのがこの二つなんです。お風呂に入っている間は強制的に自分をリセットできるし、マンガを読むときは完全にトリップするので余計なことを考えずに済みます。更に野球マンガをよく読むのですが、そのたびに高校時代を思い出しエネルギーを貰います(笑)

 

仕事ばかりしているとこれという趣味もなく、急に時間が出来ると何をするでもなくぼーっとします。根暗なのかもしれませんw

 

僕は背が高く目つきも悪いのでよく怖がられますが、中身はどちらかというとビビりです。心配性ですぐ不安になり小さなことでクヨクヨしますが、そんなイメージはほぼ持たれません。出来る風の仮面をかぶっているだけで。

 

まあ何でこんなことを書くかというと、色々なイメージが先行しすぎていると感じているからです。そのイメージを作っているのは自分なのですが(苦笑)

 

Tirpseというお店のイメージもあると思うのですが、もう少し自分らしく緩く生きたいなと思う今日この頃。

しいたけ屋平松。

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食材との出会いはいつも突然だ。

 

食事に行った時や知り合いからの紹介、はたまたいきなり送られてくることもある。料理を続けているとある程度食材にも詳しくなるが、知れば知るほどその奥深さに感銘を受ける。同じ食材でも生産者の数だけ違いがあるからだ。この食材はこの人、この時期はこの生産地のもの。魚に至っては、この時期のこの産地のものを、誰誰さんが処理したものでこのサイズなら。などと果てしなく深く、でもとても楽しい世界が待っている。

 

新しい食材との出会いは、自分の世界を変えるほどの力をもらえる。先日伺った愛知県知多半島でシイタケを作っている平松さんとの出会いはそのものだった。

 

お客様のご厚意で連れて行っていただいた『くすのき』さん。この楠さん御本人との出会いも僕の人生を変える出会いだった。そして楠さんが加熱したシイタケが僕の世界を更に変えていく。旨味も風味も自分の知っているシイタケとは全くの別物で、そこに楠さんの技術が相まって最高の一品へと昇華されている。ここに生産者と料理人のあるべき姿を僕は感じた。

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平松栄毅さんは、竹林の中で原木でシイタケを作っている。現在は菌床シイタケが主流になっており、原木で生産する方は減っているそうだ。厳選したクヌギに種駒を打ち込み20か月後に収穫が可能になる。雨量も重要で、多すぎるのは向かないらしい。冬がメインのシイタケ作りだが、平松さんは一年中シイタケと向き合う。夏のうちに竹林の環境を整え、光の入る量や風通しの強さを変えたりと、如何にシイタケにとって成長しやすい環境にするかを日々考えている。シイタケが出てきたら、袋をかけ湿度を調節し大きく育てる。水が綺麗な事、適度な湿度がある事、そして何より害獣がいないことが平松さんの特別なシイタケを生みだしている。

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平松さんは今独りでシイタケを作っている。後継者はまだ見つかっていない。農家さんも漁師さんも跡継ぎの問題は深刻です。少しでも僕たちが彼らの食材を使いアピールすることで若者たちにその仕事の素晴らしさを伝えていきたいと考えている。何が出来るかはわからないけれど、出来る事はやってみたい。それが自分たちの仕事を守る事にも繋がるはずだから。

 

『Farm to table』の言葉のようにテーブルでとどまるのではなく、『Farmmer to Heart』『Fisherman to Heart』のように、生産者から消費者に心に想いが届くように、料理を使って心の輪を広げていこう。 

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初めて作った料理は何?

シェフになり、始めて料理を作るとき何を作ったか。いきなりオリジナルの料理を作れる人はなかなかいないと思う。勿論僕もそうでした。初めは自分が働いた店の料理に似たものや、少しだけアレンジしたものがほとんど。僕が初めて作った料理は、一般的な野菜のブロッコリーを使ったものでした。

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分かる人は分かるのですが、僕にとってブロッコリーとは記憶に刻まれていて、とても大好きな食材です。そのブロッコリーにアサリの出汁とグレープフルーツ、パルメザンチーズとディルを合わせました。師匠のかの有名な魚料理の組み合わせを、ブロッコリーを主役に据えて再構成。ありふれた野菜から更なる魅力を引き出しレストランの料理へと。

 

この料理は香りの構成を初めて意識した料理で、ブロッコリーの青い香りに柑橘やハーブを合わせ、アサリとチーズで旨みの幅を広げています。ディルには柑橘系の香りがあるのでグレープフルーツとリンクします。パルメザンチーズと柑橘の愛称もとてもよく、ブロッコリーとパルメザンチーズの愛称は言うまでもなく。味わい香りの構成は三次元で、口の中では更に時間という概念が加わり四次元で変化していく。

 

自分の料理人人生で使う機会の多かった食材は、それだけ向き合い考える時間が長かったという事。そういう食材との出会いと時間を大切にしてほしい。単調な作業だとしても、その時間が自分らしい料理を生みだすきっかけになる事があるから。若い時に嫌だなと思ったことほど後になって何かが返ってくる。いつでも真摯に食材と向き合っていきたい。

日々の仕事の中から学ぶこと。

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華やかに思われる料理の仕事だが、その中身は単純作業の繰り返し。ひたすらタマネギを切ったり、カボチャを裏ごししたり、魚の骨を抜いたり。特に若いときはそうゆう仕事が多く、こんなことをするために料理人になったんじゃないとやる気をなくす人も少なくない。

 

僕もそんな仕事が嫌な時期があり、早く『料理がしたい』と思っていた。ただそうゆう仕事を続けていくと、本当に大切なことが見えてくる。料理において『丁寧』というスキルは極めて重要で、丁寧の積み重ねの上にしか美味しい料理は生まれない。これはどんな仕事にも共通するが、始めが雑な人は終わりも雑だ。最初に崩れた仕事は、最後どんなにうまくまとめた様に見せてもグラグラと揺れていて壊れないかと不安になる。そうゆう仕事ほど、分かる人にはすぐ見抜かれてしまう。

 

タマネギを丁寧に炒めるだけで、カレーは美味しくなる。適当に炒めたタマネギにはカレーに深みを与えることが出来ないから。人も同じで、丁寧を積み重ねてきた人には得も言われぬ深みが存在する。適当な人はメッキがすぐにはがれてしまう。そんなことを賄のカレーを作りながら修業時代に感じていた。どんな些細なことでも丁寧に積み重ねることで大きな結果につながるんだなと。

 

それからは、どんな仕事も自分を作る大切な物だと考えるようになり、今まで続けてこれたのだと思う。

 

若い料理人の方たちによく見て頂けているようですが、どんな仕事も大切に日々を過ごしてもらいたいなと感じます。大切なのは技術以上に心の持ち方です。

 

僕も今一度心に刻んで働いていこうと思います。

 

日本人として日本で料理をする意義とは。

今まで自己紹介と称して自分の過去の話をしてきましたが、これからは自分の作っている料理の話もしていきます。

 

 

料理人は皆、様々な思いを込めて料理を作っています。そこには自分の育ってきた環境や想い、その食材を作っている生産者への感謝や、世の中への発信。その拘りは食べるだけでは分からないことも沢山あるでしょう。僕達は、美味しいものを作ると同時に、ストーリーテラーの役割もしています。

 

ただ、お客様に対してどこまでお伝えするかはよく考える必要があります。純粋に美味しいものを食べたくて来ている場合、その想いがただのノイズになりかねないからです。そうゆう意味で、普段多くを語らない料理の事を話したいと思いました。僕が普段何を考え料理を作っているのか。料理ごとにどんなストーリーがあるのか。少しだけ耳を傾けて頂けたら嬉しいです。

 

今回は僕のシグネチャーである『イカ イカスミ 蘇』

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この料理は、僕が修行を始めた下村シェフが良く作っていた『イカのセート風』がベースになっています。南フランスのセートという港町の郷土料理でイカのトマト煮込みで、本来は真っ赤な料理。そこにイカスミを加えて更にイカのコクを深めています。この料理が大好きで、いつか自分で一皿に仕上げたいと10年以上温めていました。

 

この料理を自分の一皿にしたのは松本酒造さんとのコラボの時。この時僕は一品しか作りませんでしたが、これがきっかけでイカの料理を世に出すこととなりました。今でも松本日出彦さんが調理場に入ってきてガッツポーズを見せてくれたのを覚えています。

 

フランス料理を12年続けてきて(イタリア料理も少し勉強した)、フランスに行き感じたことは日本の事を何も知らなかったという事。フランス人に醤油や味噌の作り方を聞かれて答えられなかった。フランス料理の歴史は知っているのに、日本料理の歴史は知らない。日本に帰国して料理を続けていくうえで、自分に何ができるだろうか。日本で日本の食材を使って何を作るのか。自問自答する中で見つけた答えは、『日本人料理人が日本で料理を作る意義を見出す事』

 

日本料理ではなくフランス料理を学んできた自分にしか出来ないことは?

 

自分が培ってきた調理技術(フランス、イタリア料理)と日本人の文化や伝統を掛け合わせ、外の世界へ発信する事。柚子や抹茶だけではない日本の価値を先ず僕達日本人が再認識する。そして世界へと届けていく。日本人が守ってきた大切な財産をこれからも繋いでいく。

 

イカのセート風というフランス郷土料理に、リゾットというイタリア料理の技術を組みこみ、日本最古のチーズ『蘇』を合わせる事で自分らしい一皿に仕上げられたと思う。

 

レストランではここまでの話はなかなかできませんが、料理一皿に対して僕はこのような思いで向き合っています。そんな自分の料理のストーリーを少しづつお話させて下さい。

場所に縛られない働き方とは。

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料理人はお店があり、そこにお客様が来店されて初めて金銭的価値が生まれます。

 

美容師や介護士などの職種の方もそうで、労働集約型産業と言われています。

 

レストランとはある意味で『場所に縛られる』仕事で、それが当たり前だと思っていました。

 

しかし、料理人のスキルや知識は調理場でしか使えない訳ではありません。明確に可視化や言語化が出来ればその力はどんな場面でも価値を生みます。そしてその場面を作るのは自分です。

 

テクノロジーが進化した世の中では、今まで想いもつかなかったことが仕事になります。そこに気づくことが出来るか出来ないかだけで人生が変わるんです。

 

自分たちの過ごしている『当たり前』の世界ではない、違うジャンルの世界に触れることで自分の中の価値観を壊し、新しい発想を取り込む。

 

その繰り返しの中からイノベーションは生まれるのではないかなと。

 

料理人が料理の技術以上に磨かれるのは、タイムマネジメント力だと思う。

 

決まった時間に来るお客様に対して、最高の状態に仕上げるために時間を逆算し仕上げていく。一般的な仕事の倍の時間働くからこそ、頭を使わないと仕事が終わりません。ましてや自分の時間を確保しようものなら尚更です。

 

如何に早く仕事を終わらせ、全体の仕事のバランスを見ながら自分の時間を捻出する。

その捻出した時間で、更に料理の勉強や趣味などの時間を創り出すのです。

 

始発で仕事に行き、終電で帰る生活の中で自分の時間を確保するのは大変ですが、それをしてきたからこそタイムマネジメント力が磨かれたのだと思います。無駄な時間を出来るだけ省き、自分の時間を生みだす。

 

当たり前にしているタイムマネジメントは、きっと他の仕事の方達にも役に立つのではないかと思います。

 

 

もう少し料理以外の自分を発信する場所を作っていかなければ!!!