L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

自己紹介5。トラディショナル。

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東京を離れ、名古屋で働く。

 

短期的な仕事だったので、東京の家は残したまま名古屋へ向かった。まだ20歳だった僕には2ヶ月だけとはいえ、家賃が倍かかる状況は絶望的に苦しかった。

 

しかも名古屋では7歳年上の先輩2人との共同生活。自分のプライベートなど1秒たりとも無かった。

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『LA GRAND TABLE de KITAMURA』

 

日本人で初めてスイスの三つ星『ジラルデ』でスーシェフになった北村竜二シェフの開いた、グランメゾン。広々としたダイニングには80名近くの席があり、東京では考えられないような贅沢な空間が広がっていた。

 

厨房もとても広く、スタッフの数も多かった。

 

同世代の料理人も多く、慣れない名古屋の環境と、当時まだ苦手だった賄いに追われる日々。北村シェフの鋭い眼光から逃れるように仕事をしていたのを鮮明に覚えている。

 

それと同時に、トラディショナルなフランス料理のソースを経験出来たのは、後にも先にもこの店だけで、初めて舐めたソースビガラード(苦味の強いオレンジで作るソース)の衝撃的な旨さは、フランス料理の奥深さを僕に刻み込んだ。

 

毎朝80名分のパンを焼き、80本のオマールエビを掃除する。クリスマスにはその2倍の仕事をしました。1年目の僕には殆んど地獄の様な環境でしたが、同世代の他の料理人に負けたくない一心で働いた。

 

トラディショナルなフランス料理に触れる事が出来た貴重な機会も、初めて働いたお店を半年で辞めなければ得られないものでした。

 

知識としてではなく、経験として触れる事でより記憶に残り、舌に残りました。

 

今の時代に想うことは、得られる情報が途轍もなく増えた事で、知識ばかりが増え実際に体験し、それを技術として身に付けるということが減っている様に感じます。

 

写真を見ただけで食べたかの様に感じてしまう。本を見ただけで出来るようになった気になる。

 

料理人とは、やはり技術職で、知識もとても大切ですが、1番は技術だと思います。

 

どんなにテクノロジーが進化しようとも、料理人の強さとは、包丁とフライパンだけでどれだけの美味い料理が作れるのか。

 

その強さの上にテクノロジーを駆使し、初めて本物の料理人と言えるのではないか。

 

自分がまだ24、5の頃は自分で肉や魚を買い、ひたすら捌き、焼き、食べていました。

 

出来ない事は沢山あれど、やった事のない事をいかに無くすか。

 

0からスタートするのと、1を知っているのは雲泥の差です。

 

机上の学びも大切ですが、先ずはやってみる事。特にこれからの若い人達には先ず色々なものに自分で触れる事を大切にしてもらいたい。