L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

何故トンカツなのか?つかんとの始まり。

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昨日vol.3が終わった『つかんと』。

 

そもそも始まったきっかけは、Tirpseのオーナー大橋直誉がとんかつをこよなく愛しているのが一番の理由だが、昨年Tirpseが3周年を迎え、4年目を迎えるにあたりTirpseらしい攻めた試みをしよう!と言うのが『つかんと』の始まりだ。

 

シェフとしてはどうなのかなと思うが、僕は肉料理がそこまで好きではない(食べるのが)。

これはスタッフはもちろん、仲の良い人は皆知っている。

 

そんな中での『つかんと』は、正直始めは乗り気では無かった。そもそもトンカツを食べて興奮したことが無かった(大汗)

 

ただ、多くの人に愛され、カツ丼やカツサンド、味噌カツ、カツカレーと守備範囲の広さは、素直に凄いなと思う。

 

vol.1はカツ丼の担当だった。皆でディスカッションをして、どの様なスタイルが良いのかを話している時に僕がイタリアンもやっていた事から、リゾットにしようと決まった。

 

そこからは、一通りカツ丼の事を調べ上げ(基本的に一通りの情報を仕入れてから物事を考える。)カツ丼にはある程度の定義はあるが、どこも同じ様な物を作っている事がわかった。緑がミツバかグリーンピースかくらいの違いだ。

 

あくまで味わいはカツ丼をベースにしながらも、ビジュアルや構成はガストロノミーで培った技術を使う。

 

豚、玉ねぎ、卵、出汁、ご飯、ミツバ。

 

このシンプルな構成に共通する『香り』を探した。

 

直ぐに浮かんだのはヘーゼルナッツと白トリュフだ。豚との相性は言うまでもなく、卵と出汁にもリンクする。

 

白トリュフはオイルで、あくまで香りだけだが、鰹節の香りに強烈にリンクし、旨味のベースを跳ね上げる。卵と豚にも繋がるので、口の中での香りの余韻が長く、旨味の余韻も必然的に伸びる。

 

オペレーション的なこともとても大切で、コースで出すからにはリズム感が大切で、フランス料理店がトンカツをやるという期待感の中で、待ち時間が長いのは致命的。いかに早く提供するかも重要だ。

 

毎回カツを卵でとじる時間はないし、そんな当たり前な物を食べたいとも思わない。いつでも半熟の滑らかさがあり、誰でも出来て、早い。

エスプーマ一択だった。イメージはトリュフのかき卵がいつでも出せる様な。

 

味わいはカツ丼のイメージを守るために、カエシや鰹出汁を加え、少量のクリームでコクを出す。

 

リゾットと卵の間には細く刻んだ昆布の佃煮を入れ、最後まで噛ませる事で、着地の味わいを和のテイストに。トリュフの香りやヘーゼルナッツが洋を感じさせるが、あくまで日本のカツ丼の着地をこの昆布が決めてくれる。 

 

一口カツにはカエシと黒胡椒をかけ、味わいにインパクトを。

 

玉ねぎの部分はペコロスをピクルスにして、酸味でバランスを。

 

刻んだミツバの蒼さが全体をしめてくれる。

 

なかなかゴールの見えない闘いでしたが、vol.1前日に昆布を加える事を思い付き、味わいがガッチリ決まりなんとかTirpseが掲げる『カツ丼』を作る事が出来た。

 

自分でも本当に美味しいものが出来た気がします!

 

次回はとんかつの考察を、、、。