L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

食は時間を作る

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鹿児島県出水群長島町。

 

東京から飛行機と車を乗り継ぎ約四時間。10月に開催される『O-GILI』の為に、僕ははるばるやってきた。

 

一日しかない過密スケジュールの中、『O-GILI』の太田良冠くんがどうしても会わせたい人がいると紹介してくれたのが石元淳平さんだった。

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自然に溢れ穏やかな時間が流れるここ長島町で優しさに満ちた独自の味噌『COCOROMISO』を奥さんと四人の子供と作っている。

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淳平さんは長島町出身で、中学卒業後、飛行機のパイロットを夢見て長島町を離れるが、その夢は破れてしまい、工業高校卒業後はパイオニア液晶テレビプラズマテレビを作る技術者として働いていた。地元を離れ仕事をしていた時は、辛いことや悲しいことも多かったが、その度に故郷の味に救われたという。

 

静岡で三年を過ごし、二人目の子供が生まれたことをきっかけに淳平さんは長島町へ戻ることを決意した。

 

そして知人の紹介で地元の醸造会社に勤めることに。当時は帰ってきたばかりという事もあり仕事がなく、本望ではなかったが仕方なく働くことにしたのだとか。当時は正直全く興味はなかったそうです。

 

しかし、七年間という歳月は淳平さんの意識を変え、いつしか自分の味噌を作りたいと思うまでに味噌作りに没頭していた。

 

そして、『世の中に必要とされる、自分にしか作れない味噌を作りたい』と独立を決意。お世話になった会社を辞め、自身の会社『石元淳平醸造』を立ち上げたのだ。

 

自分のフルネームを会社名にした理由は「責任を持つこと」「自信を持つこと」そして、何よりも「自分自身を信じるために。」と淳平さんは語る。

 

美味しく身体に優しいのは勿論の事、この味噌を食べて育った子供たちが、将来都会に出て孤独や辛さと闘い疲れた時に、食べた瞬間、故郷の家族や景色、音色や色彩まで思い出せるような『時間』を作って欲しいという淳平さんの想いが『COCOROMISO』にはかけられている。

 

忙しい中で食事をすることも後回しにしてしまいがちな今の世の中で、ただお腹を満たすだけの食事ではなく『時間』を楽しみ大切にするものになって欲しい。そしてその『時間』が明日への活力になると淳平さんは信じている。

 

 しかし想いだけでは本当に良いものは作れない。ここからは試行錯誤の日々だったそうだ。美味しい味噌はいくらでもあるが、身体にも『心』にも優しい味噌はなかなかない。目指すべきはそこだと。

 

元々パイオニアの技術者だったこともあり、物事を論理的に考え、緻密に計算することが得意だった淳平さんは味噌作りにもそれを応用する。何度も実験し、データを集めては計算し改善する。科学的なアプローチをしつつも、実際に味噌を作るのは麹菌だという事から、麹菌の住みやすい環境作りを一番に考えながら作っていったそう。材料もほとんどを九州産で揃えている。

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そして独自の味噌を作るために、他の味噌屋の作り方は調べず、全てを手作業で、自分の味覚と感性を信じて突き進んだ。

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味噌の原料である麦の水分量は通常1.3~1.4%。しかし『COCOROMISO』は1.1%だそう。なぜなら麹菌が住みやすく、味噌になった時に麹の香りが活きる割合だと淳平さんは言う。しかし水分量が少ないという事は、それだけ出来上がる分量は少なく、原価もかかってしまうが、それでも優しい味わいの為には1.1%でないとダメなのだ。

 

塩分量もそう。塩分が味わいの邪魔にならぬよう、一般的な割合の12%ではなく9.5%。保存の意味合いもある塩を減らすことで保存期間は短くなってしまうがそれでも9.5%にこだわる。

 

人の都合ではなく、麹の、味噌の都合で作る。

 

「サイエンスとナチュラルの共存が発酵食品の面白さだ」と淳平さんは笑顔で語る。

 

淳平さんの子供たちはみな名前に『心』が付きます。

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子供たちの為に、多くの方の為に。

 

『COCOROMISO』の優しさで多くの人が食事の『時間』を大切に、楽しめるように。

 

人の健康を支える食の大切さを『COCOROMISO』との素敵な出逢いで改めて再確認をした。

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石元淳平醸造 

http://cocoromiso.com/about/

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