L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

つかんとを終えて。

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昨年9月に1週間だけ現れたトンカツ屋『つかんと』

 

オーナーの『トンカツ愛』から始まったこのイベントが、まさかここまで大きく取り上げて頂けるとは思ってもなかった。

 

正直初めは乗り気ではなくて。

 

元々肉料理があまり好きではない事もありましたが、それ以上に何故通常営業をやめてまでもトンカツをやるのか?そんな気持ちの中でのスタート。

 

しかし、4回目のファイナルまで続けて分かった事は、今の自分にとって、とても貴重で意味のある経験だったと言う事。

 

やはり初めは『チンケな』プライドがあったのです。真面目に10数年間修行をして来てトンカツなんて。

 

誰でも出来る料理をなんでTirpseで。

 

シェフになったばかりという事も関係していたかもしれない。

 

同世代のシェフ達が、美しい料理を作る中で、トンカツを作ることへの劣等感。

 

それでも、その中で『自分にとっての料理とは何か?』という問いが生まれ、料理を作ることで自分は何がしたいのか、そもそも何故自分は料理の世界へ足を踏み入れたのか。

 

その答えが見つかった時、つかんとの価値に気付くことが出来た。

 

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フランス料理をやっている料理人、特にガストロノミーというジャンルで闘っているシェフ達は、自分の料理にとても拘りがあり、アーティストの様な一面が強い方がほとんどだと思う。

 

なので、自分の土俵とは違う料理に対して強い拒否反応を示す事も多い。僕もその内の1人だった。

 

それが悪い訳ではなく、価値観の問題と自分が今までやってきた事への自信の表れだと思う。

 

僕自身、東京、フランスと有名レストランで働き、実力をつけてきた自信がある。他の人が見て、美しい、カッコいいと思う料理を作りたいという想いも強かった。

 

ただ、果たしてそれが自分のやりたかった事なのか?

 

食とは、料理とは、自分の人生にとってどの様な存在で、どの様な時間なのか。

 

料理人になろうと思った1番のキッカケは、『母の料理』だ。

 

料理が好きで探究心のある母は、いつも色んな料理やお菓子を作っていた。『人に出来るものは自分にも出来る』というスタンスなので、オーブンでプリンを焼いたり、てんぐさと小豆から水羊羹を作ったりと。

 

そのDNAがあるからか、僕もかなりの凝り性だ。

 

家族で外食する事はほとんど無く、皆口を揃えて『家で食べた方が美味しい』と、食卓を囲んでいた。

 

僕も専門学校の時、就職先を探すまでフレンチなど食べた事がなく、単純に料理をやって上を目指すならフランス料理だろ!という気持ちでこの世界に入る。

 

そこからは我武者羅に働き、いつしか自分の中で料理=フランス料理、非日常のもの。という構図が出来上がっていた。

 

しかし、僕にとっての料理とは、家族団欒の時間であり、母が家族の事を考える時間であり(大切な人の事を想う時間)、何よりも『人と人とを繋ぐコミュニケーション』の1つではなかったかと。

 

どんな料理を作っていても、その事は変わらない。そんな事を再確認出来たのが、この『つかんと』だった。

 

フランス料理でもトンカツでもカレーでも、僕が作れば僕の料理なんだと。

 

大切な事は、その料理で何を伝えたいのか。

 

想いの込められた料理には特別な力があり、それは必ず伝わる。

 

たとえ一杯のカツ丼でも。

 

僕は料理で多くの人とコミュニケーションを取りたい。それは生産者であったり、ゲストであったり。レストランに来る人だけではなく、もっと多くの人に伝えたい事がある。

 

その為に色々な活動をしていきたい。

 

 

 

 

何はともあれ多くの人に来て頂き楽しんでもらえた事が1番の喜びです!!!

 

つかんとフォーエバー!!!

 

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