自己紹介21。師と弟子、父と子、料理人として10年を過ごし、いざフランスへ。
10年という歳月は人を成長させる。どんなことでもそうだろう。
ただ、その10年をどう過ごすかは、その人次第だ。
僕は東京で料理人として10年を過ごし、多くのモノを見ることが出来た。
とりわけ師と仰ぐ下村シェフとの出会いは、僕の人生を語る上で欠かせない。
人生で師と呼べる人がいる事は、とても貴重で尊い事だと思う。
僕には師が3人いる。高校時代の野球部の監督でもあった井出宏さん。先生に出会わなければ、僕は努力というものを知らなかったかもしれない。野球部の理念『為せば成る』この言葉を体現できた高校3年間は僕に成功体験と自信をくれた。
もう1人は、田村正道。自分の理想の男性であり、器の大きい偉大な父だ。野球を教わり、人として、男として、大切なことは全て父の背中から学んだ。昨年この世を去ってしまったが、きっといつも見守ってくれていると思う。父のような大きな男になるのが僕の人生の目標だ。
そして料理界の父、下村シェフだ。以前にも書いたが、新卒当時は本当につらく厳しい日々だった。それでもこうして10年間料理人として続けていられるのは、下村シェフと働いたからだろう。今再び一緒に働いていることに、何か特別なご縁を感じている。
下村シェフと再び働いた3ヶ月の期間の中で多くのイベントがあった。フラワーアーティストのニコライバーグマン氏とのコラボ、名古屋『グランターブルキタムラ』でのイベント。
そして、『東京先端ダイニング』の撮影だ。この番組の中の『次世代に伝える事』という場面に僕も出演させていただいている。新卒当時から撮影部隊だった僕は、このテレビの撮影がある種、下村シェフとの集大成だと思えた。
初めの3年間よりも学びが多くあり、濃い時間だった。それは10年が経ち、僕が少し大人になったことで、見える世界が広がったからかもしれない。
若い時は、自分の事で精一杯になり、どうしても視野が狭くなってしまう。ただその時の悩みなんてものは、10年も経てば良い思い出であり、笑い話だ。その事を、今頑張っている若者たちに伝えたい。今は理解出来ないだろう。それでも伝えてくれる人がいるだけで人生は大きく変わるはずだ。
自分の価値観を押し付けるのではなく、人生には沢山の選択肢があり、価値観があることを伝えることが、これから僕のしていくことだと思っている。
無事にビザを取得することが出来、準備も着々と進んだ。
8年住んだ家に別れを告げ、2015年6月30日フランスへ。
フランスへ行く事で、何かが変わるわけではない。そんな魔法は存在しない。
ただ、行かなければ分からない、感じられない『何か』は沢山ある。
その『何か』を探しに僕は日本を離れ、フランスへと旅に出る。