L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

自己紹介29。言葉の壁再び。

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ガルドマンジェのシェフドパルティーになってから、僕の下に二人の研修生がついた。

 

一人は同い年のアルゼンチン人「フリオ」、もう一人はイタリア人女性の学生(名前は失念、その理由は後ほど)だ。フリオは陽気で優しい料理人。だが、フランス語も英語もあまり話せない。(スペイン語は話せる)イタリア人は、イタリア語しか話せなかった。戦場のような調理場で、コミュニケーションがまともに取れない二人と共に料理を作っていく。

 

言葉の壁だけならまだしも、学生はそもそもの技術もまだなく、全ての作業を確認しながら進めなくてはならず、少しでも料理を出すのが遅れればシェフから怒号が飛ぶ。イタリア人のダヴィデや、スペイン人のスタッフに間に入ってもらいながらなんとか回していたが、僕も気が長い方ではなく、毎日怒鳴りながらの営業。

 

そんな中、イタリア人の学生は気がついたらイタリアへ帰っていた。

 

フリオとは年齢も近かったこともあり何とかうまく仕事をしていたが、忙しくなるとどうしても怒ってしまっていた。それでもフリオは嫌な顔一つせずついてきてくれたことがとても嬉しかった。

 

フランスで人を使うという経験はこの短い期間しかなかったが、それでも多くの学びがあり、改めて言葉の大切さとコミュニケーションの取り方を考えさせられた。

 

 

 

秋も半ばになると、研修生たちは国に帰り始める。マントンに沢山いた人も次第に少なくなり、シーズンの終わりが見えてきた。シェフドパルティー達は変わらないが、研修生の数は半分ほどになりルームメイトのハンタ―もアメリカに帰る。一年という期限の半分をマントンで過ごし、多くの素晴らしい仲間と出会い、世界のトップクラスのシェフと働けた。

 

 

最後の週は、それぞれ今まで作ってきた賄で一番印象に残っている物を皆で話し合い、それぞれリクエストに答える賄だった。僕は『カレー』だ。散々和食を作ってきて最後にカレーかと笑ってしまったが、全員一致だったのでそれはそれで嬉しかった。カレーには何かご縁があるのかもしれない。

 

 

あっという間の半年間。それでも一生忘れることのない、自分の人生を変えた半年間。

 

沢山の経験と想いを胸に、僕はパリへと戻る。