L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

しいたけ屋平松。

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食材との出会いはいつも突然だ。

 

食事に行った時や知り合いからの紹介、はたまたいきなり送られてくることもある。料理を続けているとある程度食材にも詳しくなるが、知れば知るほどその奥深さに感銘を受ける。同じ食材でも生産者の数だけ違いがあるからだ。この食材はこの人、この時期はこの生産地のもの。魚に至っては、この時期のこの産地のものを、誰誰さんが処理したものでこのサイズなら。などと果てしなく深く、でもとても楽しい世界が待っている。

 

新しい食材との出会いは、自分の世界を変えるほどの力をもらえる。先日伺った愛知県知多半島でシイタケを作っている平松さんとの出会いはそのものだった。

 

お客様のご厚意で連れて行っていただいた『くすのき』さん。この楠さん御本人との出会いも僕の人生を変える出会いだった。そして楠さんが加熱したシイタケが僕の世界を更に変えていく。旨味も風味も自分の知っているシイタケとは全くの別物で、そこに楠さんの技術が相まって最高の一品へと昇華されている。ここに生産者と料理人のあるべき姿を僕は感じた。

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平松栄毅さんは、竹林の中で原木でシイタケを作っている。現在は菌床シイタケが主流になっており、原木で生産する方は減っているそうだ。厳選したクヌギに種駒を打ち込み20か月後に収穫が可能になる。雨量も重要で、多すぎるのは向かないらしい。冬がメインのシイタケ作りだが、平松さんは一年中シイタケと向き合う。夏のうちに竹林の環境を整え、光の入る量や風通しの強さを変えたりと、如何にシイタケにとって成長しやすい環境にするかを日々考えている。シイタケが出てきたら、袋をかけ湿度を調節し大きく育てる。水が綺麗な事、適度な湿度がある事、そして何より害獣がいないことが平松さんの特別なシイタケを生みだしている。

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平松さんは今独りでシイタケを作っている。後継者はまだ見つかっていない。農家さんも漁師さんも跡継ぎの問題は深刻です。少しでも僕たちが彼らの食材を使いアピールすることで若者たちにその仕事の素晴らしさを伝えていきたいと考えている。何が出来るかはわからないけれど、出来る事はやってみたい。それが自分たちの仕事を守る事にも繋がるはずだから。

 

『Farm to table』の言葉のようにテーブルでとどまるのではなく、『Farmmer to Heart』『Fisherman to Heart』のように、生産者から消費者に心に想いが届くように、料理を使って心の輪を広げていこう。 

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