自己紹介13。美味しいと楽しいのバランス。
カウンターのレストランにおける楽しみとは、食事自体は勿論のこと、シェフや大将と話が出来ることもプライオリティーが高いだろう。
コの字型のカウンター。目の前で料理が出来上がっていく様は、胸躍る瞬間だ。
料理人は得てして会話が苦手な人が多いが、後藤シェフは会話がとても上手く、お客様の心を鷲掴みにしていた。
料理で胃を、会話で心を掴む。
料理だけではない、人としての力、人間力が大切だとこの時実感した。
2年が経ち、カウンターでの仕事にも慣れてきた頃。
1人のお客様から言われた言葉がある。
『あなたの所作は流れるように美しい。見られている事をちゃんと理解してますね。』
かなりお年を召した女性でしたが、笑顔で僕に語りかけて下さいました。一緒に来ていた娘さんはとても驚き、『不断滅多に人を褒めないんです』と。
自分なりにオープンキッチン、カウンターでの仕事を意識してきたことが少し報われた気がした。
それ以降は常に人から見られる職業だという事を忘れぬように働いている。
シェフとして表に出れるようになった今は更に意識をしている。
清潔感は勿論のこと、この人のようになりたいと思ってもらえるように、少しでもカッコよく生きたいと思う。
人と同じ事が嫌いで、シェフといえば、短髪で真っ白いコックコートを着る。というのは絶対にしたくなかった。
何が良いかは人それぞれだが、自分は自分らしく、少しでもカッコよく。それは勿論見た目だけの問題ではなく、生き方自体を。
後藤シェフからは料理だけではなく、本当に多くの事を学ばせて頂いた。今広尾のメログラーノは毎日満席で、予約が取れない人気のイタリア料理店です。
その理由は一緒に働いた僕には良く分かります。人を愛し、人に愛されるシェフ。
少しでも後藤シェフの様に。
自分の今後を考え、そろそろ次の店をと思っていた頃。1つのレストランと出会った。
その衝撃的な出会いは、運命だったのだろう。
料理人としての考え方を180度変えてもらった店。
『L'AS』との出会いだ。
若かりし日の自分