L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

自己紹介24。いざ南仏へ。調理場という戦場。

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パリから約7時間。

 

TGVに揺られながら、初めての南仏マントンへ到着した。夏の日差しに照らされながら、ミラズールのスタッフが着くのを待つ。

 

昨日の朝までは、自分が南仏に来るとは思わなかった。

 

 

 

昨日、紹介してもらった神崎千帆さんの働くLa Ferme Saint-Simonへと足を運んだ。会ったことがないフランスへ来たばかりの料理人に、とても素晴らしいサービスをして頂き、僕の話にも親身になって聞いてくれた。ミラズールでは7年近く働きスーシェフまで勤め上げ、シェフのマウロとの信頼関係も勿論深い。

 

そんな彼女が僕の話を聞いてすぐにマウロへと電話をしてくれた。話をしてからそこまで時間は経っていなかったのにもかかわらずだ。電話を終えた彼女は僕にこう言った。

 

『明日からお店に行って!』

 

『マウロが明後日から海外に出てしまうらしいの、だから明日行って少しでも話した方がいいから。』

 

 

とても嬉しい事なのだが、この時は正直頭が回らなった。いきなり明日から?

 

『あとは、一週間働いてみて、仕事が認められればお給料も出るわ!頑張って!』

 

会ったばかりのどこの馬の骨とも分からない人にここまで出来るだろうか?信頼関係など皆無。出会った時のインスピレーションだけだ。

 

『とても嬉しいしありがたいのですが、どうしてここまでしてくれるんですか?まだあったばかりなのに』

 

ふと聞いてしまった。

 

『私はフランスに来た当初何も仕事が出来なかった。それでも沢山の人のお陰で今もこうしてフランスで働けている。誰かが困っていたら助けになろうと決めていたし、きっとあなたなら大丈夫でしょ?(笑)なんとなくそんな気がするの、雰囲気というか空気感というか。』

 

日本でもそうだったが、フランスでも人とのご縁で進むべき道が見つかるのかと、とても不思議に思いつつもこうやって育ててくれた両親に心から感謝した。

 

話し終わった後、僕はすぐにチケットを買いに駅に向かった。券売機で買おうとするも、クレジットカードが反応しない。カードの磁気がすれていて読み取れなかったのだ。同様の理由でフランスのATMのようなものでも現金が出せなかった。(海外に行く人はカードを確認してから行ってください)

 

すぐに千帆さんに連絡し、その旨を伝えた。ここまでしてもらったのに最悪だ。

チケット売り場は閉まるのが早く、少しでも時間を過ぎたら対応してくれない。(他の機関やスーパーでも割と冷たい)どうしたものかと思っていたら千帆さんが、

 

『もう一度お店に来れる?お店の近くのチケット売り場へ行きましょう!』

 

お店の仕込みもある中で、ここまでしてくれるなんて。すぐにお店に向かい合流した。

 

歩いて近くのお店は潰れてなくなっていた。

 

次に向かった場所は、もう閉店だと断られた。

 

ここまでくるともう縁がなかったのだなと思ってしまったが、千帆さんが『今このタイミングでお店に空きがあっただけでもすごいラッキーなの。だから絶対に行くべき。何としてもチケットは取りましょう。』と。

 

何から何までお世話になってしまった。最終的に何とかチケットを買うことが出来、代金まで立て替えてもらった。ここまでしてもらったチャンスを逃すわけにはいかない。

 

次の日、初めて乗るTGVにオロオロしながらも、なんとかマントンまでたどり着き僕はスタッフを待っている。

 

一台の車が止まり、男女が下りてくる。

 

陽気そうで人懐っこい顔をしたカラーラとエミリーセだ。

 

イタリア人とスペイン人と共に車に乗りお店へ。最初からフランス語が通じず英語での会話になったが、やっと海外に働きに来た実感が沸いた。

 

夕焼けに暮れるマントンの海を眺めながら、期待と不安の入り混じる何とも言えないこの気持ちを忘れることはないだろう。

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ミラズールでの戦いが始まる。