L'odoriter 料理人の新しいプロダクト。田村浩二の挑戦。

シェフとして、人として。今感じていることを少しずつ綴っていければと思っています。

日本人として日本で料理をする意義とは。

今まで自己紹介と称して自分の過去の話をしてきましたが、これからは自分の作っている料理の話もしていきます。

 

 

料理人は皆、様々な思いを込めて料理を作っています。そこには自分の育ってきた環境や想い、その食材を作っている生産者への感謝や、世の中への発信。その拘りは食べるだけでは分からないことも沢山あるでしょう。僕達は、美味しいものを作ると同時に、ストーリーテラーの役割もしています。

 

ただ、お客様に対してどこまでお伝えするかはよく考える必要があります。純粋に美味しいものを食べたくて来ている場合、その想いがただのノイズになりかねないからです。そうゆう意味で、普段多くを語らない料理の事を話したいと思いました。僕が普段何を考え料理を作っているのか。料理ごとにどんなストーリーがあるのか。少しだけ耳を傾けて頂けたら嬉しいです。

 

今回は僕のシグネチャーである『イカ イカスミ 蘇』

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この料理は、僕が修行を始めた下村シェフが良く作っていた『イカのセート風』がベースになっています。南フランスのセートという港町の郷土料理でイカのトマト煮込みで、本来は真っ赤な料理。そこにイカスミを加えて更にイカのコクを深めています。この料理が大好きで、いつか自分で一皿に仕上げたいと10年以上温めていました。

 

この料理を自分の一皿にしたのは松本酒造さんとのコラボの時。この時僕は一品しか作りませんでしたが、これがきっかけでイカの料理を世に出すこととなりました。今でも松本日出彦さんが調理場に入ってきてガッツポーズを見せてくれたのを覚えています。

 

フランス料理を12年続けてきて(イタリア料理も少し勉強した)、フランスに行き感じたことは日本の事を何も知らなかったという事。フランス人に醤油や味噌の作り方を聞かれて答えられなかった。フランス料理の歴史は知っているのに、日本料理の歴史は知らない。日本に帰国して料理を続けていくうえで、自分に何ができるだろうか。日本で日本の食材を使って何を作るのか。自問自答する中で見つけた答えは、『日本人料理人が日本で料理を作る意義を見出す事』

 

日本料理ではなくフランス料理を学んできた自分にしか出来ないことは?

 

自分が培ってきた調理技術(フランス、イタリア料理)と日本人の文化や伝統を掛け合わせ、外の世界へ発信する事。柚子や抹茶だけではない日本の価値を先ず僕達日本人が再認識する。そして世界へと届けていく。日本人が守ってきた大切な財産をこれからも繋いでいく。

 

イカのセート風というフランス郷土料理に、リゾットというイタリア料理の技術を組みこみ、日本最古のチーズ『蘇』を合わせる事で自分らしい一皿に仕上げられたと思う。

 

レストランではここまでの話はなかなかできませんが、料理一皿に対して僕はこのような思いで向き合っています。そんな自分の料理のストーリーを少しづつお話させて下さい。